EDI とデジタル化

商品マスタ整備のすすめ方。取引先ごとの品名のゆれをどう吸収するか

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商品マスタ整備で最初にやるべきことは、全商品のマスタをきれいにすることではありません。注文書に書かれた品名と自社の商品コードの対応(読み替え)を、受注しながら 1 件ずつ貯めていく仕組みをつくることです。学校給食の注文書の品名は発注側の呼び方で書かれるため、受注側のマスタをどれだけ整えても、品名のゆれそのものは無くなりません。沖縄県の実証では、EDI 化に先立って商品マスタが課題になりました。この記事では、給食の受注で品名のゆれが生まれる理由、ゆれの 4 つの型、整備の順番を説明します。

なぜ給食の受注では商品マスタが問題になるのか

学校給食の物資は、学校給食会・教育委員会・各学校や給食センターと、複数の発注元から注文が届きます(詳しくは学校給食の受発注はなぜ FAX のままなのか)。注文書の品名は、献立を立てる栄養教諭や給食センターの呼び方で書かれています。献立表の食材名であって、納入業者の商品名ではありません。同じ「もずく」でも、発注元によって指す商品が違います。

一方、受注側の商品マスタにも課題があります。Quick Link EDI が 2024 年度に沖縄県内の納入業者と取り組んだ EDI 化では、発注側と受注側で同じ商品コードを使えないことに加えて、受注側のマスタに次の状態が見つかりました(詳しくは沖縄県の学校給食 EDI 実証レポート)。

  • 商品の登録ルールが統一されていない
  • 同じ商品が重複して登録されている
  • 古い商品名が残っている
  • 拠点ごとにマスタがばらばら

この状態で発注側とデータをつないでも、どの商品を指すかは結局人が判断するしかなく、「EDI 化より先に、商品マスタだった」という教訓が残りました。判断の根拠は担当者の長年の勘にあり、その担当者にしかできない属人業務になっていました。

品名のゆれの 4 つの型

注文書の品名と自社の商品の対応がつかない原因は、4 つの型に分けられます。型によって、機械で吸収できるものと、人の知識が要るものに分かれます。

型注文書の記載自社の商品対応に要るもの
1. 呼び名が違う花かつお(ティーパック)500g削り節 500g T/P取引先ごとの知識
2. 種別・規格が省略されているもずく洗い/塩/味付け、40g〜10kg のどれか取引先ごとの知識
3. 古い商品名のまま改称・廃番前の商品名後継の商品自社の商品の履歴
4. 文字の書き方が違う全角と半角、かなと漢字、単位の表記(1kg と 1000g)など同じ商品表記の正規化(機械で吸収できる)

型 1 と型 2 の例は、2025 年度の実証先で実際にあったものです。型 4 は、表記をそろえる処理で機械的に吸収できます。難しいのは型 1〜3 で、「この取引先がこう書いたら、この商品」という対応は、取引先ごとに違ううえ、どこにも書かれていません。商品マスタ整備の本質は、この対応を担当者の頭の中から外へ出し、貯まる形にすることです。

品名のゆれの 4 つの型。型 1 は呼び名が違う(花かつお(ティーパック)500g → 削り節 500g T/P)、型 2 は種別・規格が省略されている(もずく → 洗い・塩・味付け、40g〜10kg のどれか)、型 3 は古い商品名のまま(改称・廃番前の商品名 → 後継の商品)、型 4 は文字の書き方が違う(全角と半角・かなと漢字・単位の表記 → 同じ商品)。型 1〜3 は取引先ごとの対応表で、型 4 は表記の正規化で吸収する
図 1: 品名のゆれの 4 つの型。型 4 は機械で、型 1〜3 は取引先ごとの対応表で吸収する

整備の順番: きれいにしてから始めない

実証の 1 年目は、商品マスタが整うのを待っている間、受注現場の作業は変わりませんでした。マスタを全件整えてから受注のやり方を変えようとすると、整備は終わらず、効果も出ません。順番を逆にして、受注の処理を先に変え、その中でマスタと読み替えを貯めていくのが現実的です。

STEP 0: 自社の商品マスタの最低限の棚卸し

全件を完璧にする必要はありません。受注に使う商品について、次の 3 点だけ確認します。

  • 商品コードが一意になっているか: 同じ商品に複数のコード、複数の商品に同じコードが無いか
  • 規格違いの商品を見分けられるか: 同じ商品名で規格違いの商品があるときは、「500g」「10kg」などの規格が商品名か規格の項目のどちらかに入っていて、どれを出荷するか分かるようにします。商品名に規格が含まれていても構いません。無理に商品名から外すと、かえってどの規格か分からなくなります
  • 廃番と旧名称を整理したか: 廃番の商品はマスタから外すか、後継の商品が分かるようにします

拠点ごとにマスタが分かれている場合は、受注で使う拠点のマスタから始めます。

STEP 1: 登録ルールを 1 枚にまとめる

新しい商品を登録するときの決まりを、1 枚のルールとして書いておきます。項目は次の 4 つで足ります。

項目決めること
商品コード桁数、英数字の種類、先頭の 0 の扱い
商品名正式名称の書き方(全角・半角、メーカー名を入れるか)
規格単位と入数の書き方(例: 500g、1kg×10)
更新誰が、いつ登録・変更・廃番にするか

注意

商品コードを Excel で管理していると、「0012」のような先頭が 0 のコードが数値として扱われ、「12」に変わることがあります。先頭に 0 を使うコード体系では、列を文字列として扱うか、CSV で保存して値を確かめます。

STEP 2: 取引先ごとの読み替え表を、受注しながら貯める

ここが整備の中心です。「注文書の品名 → 自社の商品コード」の対応表を、取引先(発注元)ごとに持ちます。同じ品名でも発注元によって指す商品が違うので、取引先をまたいで 1 つの表にはしません。

対応表は、最初から全部を書き出そうとしないことが大切です。注文書が届き、担当者が商品を判別するたびに、その結果を 1 件ずつ表に足します。給食の注文は献立の周期で同じ品名が繰り返し届くため、貯めた対応は次の注文書からすぐ効きます。判別の知識がベテランの頭の中から表へ移り、ほかの担当者も同じ判断ができるようになります。

STEP 3: 運用に組み込む

  • 新商品・名称変更・廃番が出たら、STEP 1 のルールでマスタを更新し、読み替え表の対応先も直す
  • 月に一度、読み替え表に無かった品名(担当者が手で判別した件数)を見る。減っていれば整備は進んでいます
  • 発注側との商品マスタの連携は、受注側の整備が進んでから。発注側にも、最新の商品情報で献立を立てられる利点を示して、デジタル発注へ移っていきます
整備の順番。STEP 0 自社マスタの最低限の棚卸し、STEP 1 登録ルールを 1 枚に。STEP 2 は受注しながら貯める循環で、注文書が届く → 担当者が商品を判別して確定 → 読み替え表に 1 件足す → 次の注文書では提案される、を繰り返す。STEP 3 は運用で、マスタの更新・未登録の品名の確認・発注側との連携
図 2: 整備の順番。受注のたびに読み替えを 1 件足し、次の注文書から判別が要らなくなる

Quick Link EDI は、STEP 2 の「受注しながら貯める」を仕組みとして持っています。

  • 商品カタログ: 商品コード・商品名・価格・規格の 4 項目の CSV または Excel をアップロードするだけで登録できます。同じ商品コードの行はエラーになるので、コードの一意性が保たれます(カタログをアップロードする)
  • AI 受注で読み替えを貯める: FAX で届いた注文書を PDF でアップロードするときに取引先を指定します。AI が品目名を読み取り、カタログから候補を一致度の高い順に提示し、担当者は正しい候補を確定するだけです。取引先ごとの過去の注文履歴を学習するので、一度確定した読み替えは次の注文書から提案されます。2025 年度の実証では、約 8 割が第 1 候補で正解でした(商品マッチング候補を確定する)
  • 変換テーブル: 取引先から EDI や CSV で届く受注データの商品コードは、「変換前の値 → 変換後の値」の対応表(変換テーブル)でまとめて自社のコードに置き換えられます。会社単位で共有されるので、対応表が個人のメモに残りません(変換テーブルを管理する)
  • 編集ルール: 表記のばらつきをそろえる、入り数の違いを数量に反映するといった定型の編集手順を保存し、次の受注データにまとめて適用できます(編集ルールで操作を自動化する)

導入サポート(初回のみ・任意)では、5 つのフェーズのうち 3 番目が商品マスタ整備です。商品カタログデータの整備・登録と変換テーブルの設定・検証を、IT コーディネータ/中小企業共通 EDI 推進サポータの有資格者が担当します。受注企業は受注明細 300 件/月まで無料で使えます。詳しくは製品概要・利用料金をご覧ください。

出典

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